ジェームズ・タレル氏、第32回高松宮殿下記念世界文化賞受賞

南寺

世界の優れた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞(公益財団法人 日本美術協会主催)の第32回受賞者が、2021年9月14日(火)、ローマ、ロンドン、パリ、ベルリン、ニューヨーク、東京の各都市で発表されたのでメモしておきます。(プレスリリース|photo:南寺 [香川県・直島])

今年の受賞者には、アフリカの飢餓、肉体労働者、難民・移民や地球の生物と環境、ブラジル・アマゾンの生態系や先住民族などを対象にフォト・ドキュメンタリーを撮り続けているセバスチャン・サルガド氏、天文学や物理学の知識を基に、見る人の知覚力を引き出す光による作品を世界各地で創造し、「光と知覚」のアーティストとして高い評価を得ているジェームズ・タレル氏、風の向き、気温、周囲の光など環境的要素に細心の注意を払いながら、オーストラリアの自然環境の恩恵を最大限に活かした生活空間を生み出すグレン・マーカット氏、10代でチェロの巨匠と肩を並べ、これまでに100作以上のアルバムをリリース、グラミー賞を18回受賞、ジャンルを“越境”するチェロ奏者ヨーヨー・マ氏が選ばれました。

演劇・映像部門は、新型コロナウイルス・パンデミックの影響により、多くの候補者が受賞要件を満たすことができなかったため、今回は「受賞該当者なし」となりました。

第32回 高松宮殿下記念世界文化賞受賞者
■ 絵画部門    セバスチャン・サルガド (ブラジル/フランス)
■ 彫刻部門    ジェームズ・タレル (アメリカ)
■ 建築部門    グレン・マーカット (オーストラリア)
■ 音楽部門    ヨーヨー・マ (アメリカ)
■ 演劇・映像部門 該当者なし

ジェームズ・タレル (James Turrell)氏は、1960年代から今日まで、光と知覚の関係を一貫して探求する現代美術家。ポモナ・カレッジで数学と知覚心理学を、カリフォルニア大学大学院で美術を学び、クレアモント大学院大学で芸術修士号を取得。矩形にくり貫かれた天井を見上げ、刻々と変化する空の色や光を体感する《スカイスペース》シリーズのように、人の知覚を静かに引き出す光の作品で知られています。1979年からライフワークとして取り組む《ローデン・クレーター》プロジェクトは、死火山の火口と内部に空間を作り、天体の運行に合わせて光を知覚するという壮大な計画で、2026年完成予定。日本国内では香川県直島の「地中美術館」や「南寺 ※」、金沢21世紀美術館、新潟県十日町市の《光の館》などに常設作品があります。

※「南寺」は、内部のジェームズ・タレル氏の作品《Backside of the Moon (バックサイド・オブ・ザ・ムーン)》(1999年)のサイズにあわせ、建築家 安藤忠雄氏が建物を設計しました。この近辺には極楽寺や八幡神社などがあり、直島の歴史的、文化的な中心地となっています。「南寺」は新たに建てられた建物ですが、かつてここに実在していたお寺が人々の精神的な拠り所であったという記憶をとどめようとしています。

[ 関連するサイト ]
高松宮殿下記念世界文化賞
James Turrell

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