国立新美術館開館15周年記念 李禹煥、2022年11月7日まで開催

国立新美術館

東京・六本木の国立新美術館では、同館開館15周年を記念して2022年8月10日(水)から11月7日(月)、日本の「もの派」を代表する作家として国際的にも大きな注目を集めてきた現代美術家 李禹煥 (リ・ウファン)氏の大規模な回顧展が開催しているのでメモしておきます。(photo:国立新美術館|プレスリリース[PDF])

東洋と西洋のさまざまな思想や文学を貪欲に吸収した李氏は、1960年代から現代美術に関心を深め、60年代後半に入って本格的に制作を開始しました。視覚の不確かさを乗り越えようとした李は、自然や人工の素材を節制の姿勢で組み合わせ提示する「もの派」と呼ばれる動向を牽引しました。また、すべては相互関係のもとにあるという世界観を、視覚芸術だけでなく、著述においても展開しました。

李氏の作品は、芸術をイメージや主題、意味の世界から解放し、ものともの、ものと人との関係を問いかけます。それは、世界のすべてが共時的に存在し、相互に関連しあっていることの証なのです。奇しくも私たちは、新型コロナウィルスの脅威に晒され、人間中心主義の世界観に変更を迫られています。李の思想と実践は、未曾有の危機を脱するための啓示に満ちた導きでもあります。

本展では、「もの派」にいたる前の視覚の問題を問う初期作品から、彫刻の概念を変えた<関係項>シリーズ、そして、静謐なリズムを奏でる精神性の高い絵画など、代表作が一堂に会します。また、李氏の創造の軌跡をたどる過去の作品とともに、新たな境地を示す新作も出品されます。

本展は、李禹煥が自ら展示構成を考案しました。1960年代の最初期の作品から最新作まで、李氏の仕事と経過と性格を網羅的に浮き彫りにするものです。本展は、彫刻と絵画の2つのセクションに大きく分かれ、彫刻と絵画の展開の過程が、それぞれ時系列的に理解できるように展示されます。また、野外展示場には石とステンレスを用いた大型作品が設営される予定です。

李禹煥 (リ・ウファン)氏は、1936年韓国慶尚南道に生まれ、ソウル大学校美術大学入学後の1956年に来日し、その後、日本大学文学部で哲学を学ぶ。1960年代末から始まった戦後日本美術におけるもっとも重要な動向の一つ、「もの派」を牽引した作家として広く知られています。1969年には論考「事物から存在へ」が美術出版社芸術評論に入選、1971年刊行の『出会いを求めて』は「もの派」の理論を支える重要文献となりました。『余白の芸術』(2000年)は、英語、フランス語、韓国語等に翻訳されています。50年以上に渡り国内外で作品を発表し続けてきた李氏は、近年ではグッゲンハイム美術館(ニューヨーク、アメリカ合衆国、2011年)、ヴェルサイユ宮殿(ヴェルサイユ、フランス、2014年)、ポンピド ゥー・センター・メッス(メッス、フランス、2019年)で個展を開催するなど、ますます活躍の場を広げている。国内では、2010年に香川県直島町に安藤忠雄氏設計の李禹煥美術館が開館しています。本展は、「李禹煥 余白の芸術展」(横浜美術館、2005年)以来の大規模な個展となります。

本展作品リスト [PDF]

国立新美術館開館15周年記念 李禹煥
会期:2022年8月10日(水)~11月7日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室2E (map)
時間:10:00~18:00
休館日:毎週火曜日
観覧料:当日一般1,700円
問い合わせ:ハローダイヤル Tel.050-5541-8600

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