東京・六本木の国立新美術館では、20世紀にはじまった住宅をめぐる革新的な試みを再考する大規模な展覧会『リビング・モダニティ:住まいの実験 1920s-1970s』が2025年3月19日(水)から6月30日(月)まで開催しているのでメモしておきます。(photo:国立新美術館|プレスリリース)
本展覧会では、20世紀にはじまった住宅をめぐる革新的な試みを、衛生、素材、窓、キッチン、調度、メディア、ランドスケープという、モダン・ハウスを特徴づける7つの観点から再考します。そして、特に力を入れてご紹介する傑作14邸を中心に、20世紀の住まいの実験を、写真や図面、スケッチ、模型、家具、テキスタイル、食器、雑誌やグラフィックなどを通じて多角的に検証します。
1920年代以降、ル・コルビュジエ氏 (1887–1965年)やルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ氏 (1886–1969年)といった多くの建築家が、時代とともに普及した新たな技術を用いて、機能的で快適な住まいを探求しました。その実験的なヴィジョンと革新的なアイデアは、やがて日常へと波及し、人々の暮らしを大きく変えていきました。
本展覧会は、当代の暮らしを根本から問い直し、快適性や機能性、そして芸術性の向上を目指した建築家たちが設計した、戸建ての住宅をご紹介するものです。1920年代から70年代にかけて建てられたそれらのモダン・ハウスは、国際的に隆盛したモダニズム建築の造形に呼応しつつも、時代や地域、気候風土、社会とも密接につながり、家族の属性や住まい手の個性をも色濃く反映しています。理想の生活を追い求めた建築家たちによる暮らしの革新は、それぞれの住宅に固有の文脈と切り離せない関係にあります。
一方、それらの住宅は、近代において浮上してきた普遍的な課題を解決するものでもありました。身体を清潔に保つための衛生設備、光や風を取り込む開放的なガラス窓、家事労働を軽減するキッチン、暮らしを彩る椅子や照明などの調度、そして住まいに取り込まれた豊かなランドスケープは、20世紀に入り、住宅建築のあり方を決定づける重要な要素となったのです。そして、こうした新しい住まいのイメージは、住宅展示や雑誌などを通じて視覚的に流布していきました。
今から100年ほど前、実験的な試みとして始まった住まいのモダニティは、人々の日常へと浸透し、今なお、かたちを変えて息づいています。本展覧会は、今日の私たちの暮らしそのものを見つめ直す機会にもなります。
見どころの一つとなる2階の会場では、近代建築の巨匠 ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ氏の未完のプロジェクト「ロー・ハウス」を原寸大で実現するほか、同時代にデザインされて、現在も使われている名作家具を体感できるコーナーを設けます。また、特設会場では、名建築の窓を再現した VR 体験ができるイベントや、本展に関連した対談、講演会などのさまざまなプログラムも開催します。
会期:2025年3月19日(水)~6月30日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E、企画展示室2E (map)
時間:10:00~18:00 金曜日・土曜日は20:00まで
休館日:毎週火曜日 ※ただし4月29日(火・祝)と5月6日(火・祝)は開館、5月7日(水)は休館
観覧料:当日一般1,800円
問い合わせ:ハローダイヤル Tel.050-5541-8600
[ 関連するサイト ]
「リビング・モダニティ:住まいの実験 1920s-1970s」公式サイト
国立新美術館