東京・木場公園内の東京都現代美術館では、、戦後日本において抽象彫刻家・造形作家として活躍した多田美波氏の大規模個展『多田美波 ― 光、凛と ゆれる』を2026年8月29日(土)から12月6日(日)まで開催しているのでメモしておきます。(photo:東京都現代美術館|プレスリリース[PDF])
本展では、多田美波研究所の全面的な協力のもと、初期の絵画、各時代の彫刻、作家本人が「光造形」と呼んだシャンデリアを含む照明の作品、およそ70点に加え、建築造形のパーツ、写真、スケッチなどのアーカイブ資料を展観し、約70年にわたる多田美波の仕事をあらためて俯瞰します。
生涯でおよそ200点の彫刻作品と、500点に及ぶ建築関連作品を手がけた多田氏は、美術館という枠にとどまらず、公園、駅、市庁舎、ホテル、劇場など、都市のさまざまな場所に作品を残し、長年にわたり人々の生活空間の一部を形つくってきました。空に向かってすらりと伸びていくようなステンレスの彫刻や、自然の景観に心地よく馴染むガラスやアクリルの彫刻、あるいは色とりどりの光を内包する「光壁」など、その表現は素材・スケールともに多岐にわたります。
多田氏は、高度経済成長期を背景に普及した工業素材や加工技術を、芸術表現に積極的に取り入れた先駆的作家のひとりです。制作の手跡を感じさせない無機質な表面に、光の反射や透過、屈折、揺らぎといった有機的な要素を取り込み、移ろいゆく周囲の環境や鑑賞者の動きと呼応して表情を変える造形を生み出してきました。これらの試みは、量塊性や安定性を重視するアカデミックな具象彫刻の規範から離れ、空間や環境との関係性を志向した、戦後の抽象造形における展開に位置づけられます。なかでも多田は、光を単なる効果ではなく造形の中心として据え、美術、プロダクトデザイン、インテリア、建築を横断しながら空間そのものに働きかける実践によって、同時代の潮流のなかでも独自の立ち位置を築きました。
こうした仕事は、新しい素材や技術に対する鋭い感受性と探究心、そして協働者である技術者との確かな信頼関係によって実現されました。その根底には、人間にしか創出できない美としての「第二の自然」を探究する姿勢が貫かれています。
多田美波氏は1924年、台湾・高雄に生まれ、朝鮮で育つ。高校在学中に朝鮮美術展覧会へ出品し入賞。1944年、女子美術専門学校 (現・女子美術大学)西洋画科を卒業し、1956年に第41回二科展、1957年第9回読売アンデパンダン展に油彩画を出品。1957年、東京・炭労会館のためにレリーフ《炭鉱》を制作。1962年、多田美波研究所を設立。代表的な彫刻作品に、半円球のアクリルにアルミニウムを蒸着メッキし鏡面のように仕上げた《周波数37306505》(1965、東京都現代美術館)やステンレスの屋外彫刻《キアロスクーロ》(1979、東京国立近代美術館)があります。建築空間における仕事としては皇居新宮殿の光造形 (1968)や約7,600個ものガラスブロックから作られた帝国ホテル 東京に設置された光壁《黎明》(1970)、紫雲をイメージしたリーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクションの照明《瑞雲》(1973)などがあげられます。2014年に逝去。
会期:2026年8月29日(土)~12月6日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室B2F (map)
開館時間:10:00~18:00
休館日:月曜日、9月24日(火)、10月13日(火)、11月24日(火)
※9月21日(月・祝)、10月12日(月・祝)、11月23日(月・祝)は開館
料金:一般1,600円
問い合わせ:東京都現代美術館 Tel.03-5245-4111
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